canno-shiのすこしみらいを考える

現在と過去を通じて少しだけ未来を考えるためのブログです。予測ではないですが、ありたい未来を考えていく気持ちです。

2017年に読んでよかった本7冊のご紹介

最近、友人から「普段どんな本読んでるの?」と聞かれることが増えてきました。
オススメする本はその時々や相手の興味関心で変わるのですが、振り返りも兼ねて、今年読んでよかった本の紹介でもしてみようかと思い立った次第です。

 

そろそろ「今年最後に読む本は何にしようかなぁ」と考える時期だと思いますので、これを機に手を出してみていただけたならとても嬉しいです。
では、早速参りましょう。

 

■1冊目 『ニコマコス倫理学アリストテレス(渡辺邦夫訳)
哲学や物を考えることが好きと言いながら読んでないのは恥ずかしいよなぁ、と思って読みました。

感想としては「あれだけ幸せについて考えていたのにこの本読んでなかったとかほんと恥ずかしい」というもので、ここまで緻密に幸せについて考えている人がいたのなら、自分がやってきたことは一体何なのか、と思わされました。

また。途中で出てくる「デロス島の碑文」が非常に良かったです。曰く、

もっとも美しいのはもっとも正しいもの。
もっとも望ましいのは健康であること。
だが、もっとも快いのは人が憧れているものを手にすること。

快いことを良しとするかどうか、考える指針になりますね。
何にせよ、今年読んだ本の中で「1回一緒にのみにいきたい筆者ナンバーワン」でした。
叶わぬ願いなのが残念です。

 

■2冊目 『人生の短さについて』セネカ(中澤務訳)
賢者について知りたいと思い、それならストア派でしょうと思って読みました。

単刀直入に「人生が短いのではない。有効に使うなら偉大なことも成し遂げられる。だが、多くの人は浪費しているのだ」と言ってくれるのが心地よいです。
過去の時代の人も自分の職責の大きさや家族・親戚関係に悩み、それでもよりより人生を送ろうと努力していたことを知ることは、とても励みになりますね。

 

■3冊目 『ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか』NHKスペシャル取材班
読書会でお勧めいただき、素敵なタイトルだと思って読みました。

個人的な感想は「ヒトの心にフォーカスしたサピエンス全史」です。
ただし、語り口調で非常に読みやすいのと、NHKの方々がどれだけ深くまで掴もうとして仕事をされているのかという、とても質が高い仕事の一端を知れる貴重な本でもあります。

読み終わって感じたのは「この本を読まずに人の心について考えていたことが恐ろしい」ということ。
まだ読みきっていないので挙げていませんが『ミンスキー博士の脳の探検』で描かれているきちんとした論理の裏側に、こうした歴史的な積み重ねがあることを知っていると、論理と感情の両方から心というものに迫れる気がします。

個人的には、最終章で貨幣と心の関連性についても書かれていたのが素晴らしかったです。
永遠の富という概念は貨幣によって作られたというのは、人間の柔軟性を示すとても強い証拠になるな、と思います。

 

■4冊目 『なぜ弱さを見せ合える組織が強いのか』ロバート・ギーガン
良書『なぜ人と組織は変われないのか』の著者の本。一見タイトルですが、事例の会社をまったく知らなかったため、これは新しい本だと思い読みました。


とても良かったのが「社員は労働時間の半分を『弱点を隠したり、好ましい評判を維持したりする』という無駄な(お金を生み出さない)仕事に費やしている」という文章。
これに出会えただけで読んだ価値があった本です。

この本を読むまでは「所属する個人の幸福を考えた場合、大組織というものはこれ以上不要なのではないか」と思っていたのですが、組織によってより良く生きられる個人もおり、こうした組織はその個人の重要な居場所になると感じています。
それならば、大きな組織にも存在価値はあるだろうと。

逆に言えば、個人を幸福にしない組織に存在価値は無い、と言えてしまうところまで時代がきたのかな、と思っています。

 

■5冊目 『新・幸福論』内山節
先日「現代の幸福論が必要なんだよ」という軽はずみな発言をしてしまい「現代の幸福論ってなんだろう」と思ってAmazonで検索したら出てきたので読みました。

近現代の終わりを紐解き「個が失われた」のではなく「様々な関係性が遠くへ行ってしまった」ことを丁寧に語っていく内容です。
最近発売された『残酷すぎる成功法則』でも結局は環境との関係性が最重要という話をしていますが、その背景を知りたいのであればこの本が(日本に住む人であれば)おすすめできます。

ヒューマンで論じられている貨幣の話とも近く、近現代の弱点は多くの関係が投資(お金でお金を増やす行為)に変わってしまったことだというのは本当にそうだと思います。
お金は手段であることを自覚し、それによって達成したい目標(=幸福=満たされた状態)を明らかにし、良い関係を築くのが大事だよなぁと改めて思わされました。

 

■6冊目 『はじめての「禅問答」』山田史生
自分との関係性を見つめ直すなら禅だよなぁ、と思って読みました。

鈴木大拙さんの『禅』も読みましたが、あちらが教科書ならこちらは資料集。
気づいたらパラパラとめくってしまい、面白く読めました。

禅問答というと取っ付きにくく神妙な感じな雰囲気があります。
ただ、この本では非常に人間臭いところやいい加減な部分もあり、当時の「真剣に真理に近づこうとしていた人たち」の心構えや葛藤が分かって非常に参考になります。

「真理とは何ですか?」と師匠に聞いて叩かれたりそっぽを向かれたりすることはとても面白くて、そんなものは問いにしちゃいけないし言葉でやり取りするようなものではないんだよな、ということを教えてくれた本でした。

 

■7冊目 『隷属なき道』ルドガー・ブレグマン
これまで見てきた通り、周囲の環境や自分との関係性をどうするか?というのは人生におけるとても重要な問いです。
そうした中で「人間と社会のお金の関係性の編み変え」の動きとして注目しているベーシックインカムを推進している著者の本なので読みました。

副題がとてもイケてないことが残念ですが、内容はとても洗練されています。
経済が発展し続けなければならないこと、人間が働き続けること、稼ぎが多い人がもてはやされること。
これらは全て、過去の遺物として葬られるべきものです。
ただし、労働以外の仕組みで他者とうまく関わり、安定した環境を築くことはとても難しい。
なぜなら、労働というのは対価のためにイヤな相手ともコミュニケーションを取らせるための舞台装置だからです。
(これは一部を強調しすぎで、労働の中にも素晴らしいものは確かにあります)

そんなわけで自分はベーシックインカムには大賛成なのですが、そのためには人間の心を強くする(関係性を編み変える)方法を知らなければならないと思っているのです。

 

以上、今年読んでよかった7冊のご紹介でした。
こうして見ると、自分なりにあるテーマに沿って読んだ本が心に残っているなと思います。
自分の生活を豊かにすることもそうですが、どうしたらそれを世の中に一般化できるのか?
そんなことを考えられる本に出会えたらいいなと、心から思うのです。