canno-shiのすこしみらいを考える

現在と過去を通じて少しだけ未来を考えるためのブログです。予測ではないですが、ありたい未来を考えていく気持ちです。

【ズートピア観覧記】"Try Everything"という言葉から省略されたもの。

 ズートピア、面白い映画でしたね。
進行上納得いかなかった点や心に落ちてこない部分はありましたが、それでもまぁ、面白い映画だったと思います。

ただ、良い映画だったか?と言われると、前評判ほどではなかったな~という感触でした。期待値上がりすぎちゃったかな。

 

批判したいわけではないのでその辺りは省略しますが、1つだけ書き留めたいなぁと思ったのが、タイトルの「"Try Everything"という言葉から省略されたもの」という内容でした。
主題歌"Try Everything"という、ジュディの心を歌ったかのような、明るくて元気な歌。
日本語だと「やるのよ 何度も」と訳されていて、挫けそうな人に力を与えてくれそうな曲でした。

 

でも、映画を見て、この曲を聴いていると、すごく重要な内容が省略されているように思うのですね。
それは、Try Everything "if you want anything you want to do"ということ。
つまり「やってみたら。『やりたいことがあるのなら』」ということ。

 

ここから思考の垂れ流し。
ジュディは「世の中をよくするため」に警察官になりたかったし、ニックもやりたいことがあった。

そのために苦労したり傷ついたり苦労したこともあったけれど、少なくともやりたいことがあって、そのために頑張っていた。
おそらく、他の「ズートピア」に来ている人もそう。自分たちの出身地ではできないことがあって、決められた生き方に飽きて、何でもできるズートピアにやってきた。そこではもちろん、普通の「現実」が待っているのだけれど。

 

ズートピア」自体は、非常に整って綺麗な世界ではあるが、その語感から想像される「理想郷」とはほど遠い。そこを理想郷として語るのは、あくまで憧れている地方の人でしかない。
現実が理想郷になるのは、ジュディがやりたいことのために、自分の力をフルに出し切って、誰かに屈することなく、強く生きていくからだ。
あと、(これが何より重要なのだが、)無茶苦茶運がいいってのもある。自信を無くした時に事件が起きるのは、主人公の特権だ。モブキャラには、そこまでのボーナスステージはなかなか起こらない。(ニックと一緒に詐欺やってたキャラとか。)

 

では、そこまで強く自分の「やりたいこと」を持つ理由はなんだろう?
普通の両親、多くの兄弟と一緒に生きる中で、自分の目指すものを心折れずに貫き通せたその芯はどこで育まれたのだろう?
もちろん、それは映画の中では触れられていない。たぶん、ジュディがそういう子だったから、が1番分かりやすいだろう。そこが少し残念ではあった。

 

話は飛ぶ。
いったい、普通に生きていて、ここまで「やりたいこと」を貫き通せる芯を持つことができるだろうか?
「未来化する社会」という、今後起こりうるパラダイムシフトについてヒラリー・クリントンの元参謀という人が書いた本がある。様々な未来を記述したうえで、1番大事な仕事は「親であること」と言い、あとがきで世界中のVIPたちが、自分の子どもたちに何を与えているかを書いている。

 

曰く「アフリカの貧困地域に行って、世界の問題をその目で見て実感すること」。それこそが、世界中のVIPが自分の子どもたちに与えると、1番良い影響が出ると思っていることだ。
なぜなら、現実を自分の中に取り込まないと、やりたいと思ってもすぐに心が折れて、決意なんてものはすぐに捨てられてしまうからだ。

 

今の時代の先進国であれば、過去のどんな時期と比べても、やろうと思えばやれる時代であることは間違いない。身分で住処を決められることもないし、親の仕事を継ぐ義務があるわけでもない。だから、やりたいことが出来る時代であることは間違いない。
でもそれは、自分の中にやりたいことがあって、それを大事に育み続けて、他人との相互作用の中で「それは大事なもので手放しちゃいけないものだ」と思えたことだけでしかない。
「現実を見なさい」「そんなものは捨てなさい」と言われたら、通常であればすぐに消えてしまっているはずのもの。だから、それを捨てなかったジュディは凄い。

 

・・・結局のところ、自分のやりたいことが貫けなかった人間の、たいしたことのない後悔録になってしまった。たぶん自分は、過去に自分を貫かなかったことを悔やんでいるし、今後もそういう生き方をしそうなことに恐怖を抱いている。
今の世の中、自分を知って自分を大事にして自分を貫くこと以上に、社会的にも経済的にも成功する道は無いというのに。

 

おそらく、ズートピアにそこまで感情移入できなかったのは、ニックが思ったよりも良いやつすぎたからかな。12年間詐欺師として生きているのに、きらきらした心は忘れていなかった。あるいは、ジュディの純真さに惹かれすぎたのか。いずれにしても羨ましい。

 

「やりたいこと探しに逃げるな」という言葉もあるけれど、やはりそれは諦めてしまった人たちの言葉で、ジュディの両親と同じだ。そこに与することはできない。
なぜなら、人が死の間際に1番後悔するのは「もっと自分の思う通りに、誰かの意見に左右されずに生きればよかった」ということだからだ。
これが本心なのか、世の中的にそういうことになっているかは分からない。ただ、誰もが後悔することが分かっていることを、自分も後悔する必要はない。

 

やりたいこと、諦め、後悔、羨望。不思議なキーワードが出てきた。
もう少し、自分自身に素直になれればという思いも込めて。