エンタメって、結局なにかね?~桑田さんのお詫び文から考える~
サザンオールスターズの桑田佳祐さんが、紅白でも放映された年越しライブの演出について、お詫び文を発表されました。
http://www.amuse.co.jp/saslive2014/
紅白放映直後から
「つけひげは独裁者をにおわせるメッセージか?」と騒がれたり、
ライブの様子から
「紫綬褒章の扱いがひどすぎやしないか?」と言われていましたが、
それに対して公式見解を出すということは、エンタメという領域では保護し切れない、無視できないことが多くなりすぎたんだと思います。
それは、お詫び文に含まれる以下の点から感じられます。
「お客様に満足していただける最高のエンタテインメントを作り上げるべく、全力を尽くしてまいりました。そして、その中に、世の中に起きている様々な問題を憂慮し、平和を願う純粋な気持ちを込めました。」
「すべてのお客様にご満足いただき、楽しんでいただけるエンタテインメントを目指して、今後もメンバー、スタッフ一同、たゆまぬ努力をして参る所存です。」
どのような意図があったのであれ、ライブに関わる方々が「お客様を満足させる最高のエンタテイメント」を目指していた、というのは、信じてよいと思います。
音楽に平和を願う気持ちをのせるというのも、通常行われていることです。
今回明らかにまずかったのは、そのためのツールとして「紫綬褒章」という、権威の象徴を用いたことでしょう。
権威者から何かをもらうということは、本人の想いはどうあれ、その権威の内に所属したというメッセージを発します。
おそらく、紫綬褒章を受ける前と後で、意見を言ってくる人の数も層も大きく変わったでしょう。それだけ、権威の周りには多くの人がいます。
そしてその人たち(おそらくは「お客様」ではない人たち)には、エンタメの文脈が通用しなかったと、こういうことでしょう。
エンタメ=遊びはあくまで「実利のないもの」だから、その辺で好き勝手やっている分には見逃してやる。
でも、中央に属しながらそんなことしてたら、痛い目にあうぞ。
そんなメッセージが、この件からは透けて見えてきます。
エンタテイメントは1つの表現手法であって、その枠に収まる限り、ある程度の思想・表現の自由が認められているはずです。
ただ、その枠から出るにはとても大きなリスクが伴うでしょうし、近頃、そのような戦いをしているエンタテイナーを見ることもありません。
社会と戦うだけがエンタテイメントではありませんが、現在のマスコミ上に出ている「芸能人」と呼ばれる人たちにその感覚はほとんど感じられませんし、もしこの件でリスクを取る人がさらに減るのであれば、それはとても悲しく、損失の大きいことでしょう。
そして、この損失の大きさを感じられない人が多数だとするなら、それこそが大きな悲劇だと言えるかもしれません。